ファーブル昆虫記 4 攻撃するカマキリ (集英社文庫)

子グモをたっぷり乗せた母グモ同士が鉢合わせをすると、大げんかになり、一匹がもう一匹をかみ殺して食べ始めた。このとき、負けた母グモの背中にいた子グモは敵の母グモの背中に乗ってしがみつく。勝った母グモもそれを気にしない。クモは長い糸を出して空中に漂わせる。その糸がむこうの枝にくっつけば、それを伝って歩きながら巣をつくる。風を利用している。クモは獲物を噛むのではなく、口から消化液を出して獲物を溶かしてからごくごく飲み込む（体内消化）。だから、獲物が生きていて、血が体中をめぐっている方がクモの消化液を体中に回せるので都合がいい。サソリの目は上を睨んでいるのでおそらく前方はよく見えない。サソリはハサミでものにさわりながら歩いている。サソリは小さな獲物しかとらないし、臆病。カマキリの幼虫にもビビるくらい。サソリは小食でもある。しかし、５月になって結婚の季節になるととんでもなく大食らいになる。ふつうの獲物だけでなく自分の仲間までかじりはじめる。共食いをするときにはしっぽ以外は全部食べてしまう。サソリの結婚は真夜中に行われる。結婚式が終わるとオスはさっさと逃げ出す。逃げ切れないと、メスはオスを毒針で刺し殺してむしゃむしゃ食べてしまう。メスの毒針で刺されるときオスは抵抗しない。毒針で刺せばメスを殺せるはずなのだが。カマキリのメスは、オスと交尾し、オスを食べてしまう。オスはうまく逃げることもあるが、食べられるときにはおとなしく食べられてしまう。オスは頭を失っても交尾できる。交尾のときに、メスはうしろを振り向いてオスの身体をかじることもある。この光景にファーブルはショックを受けている。昆虫だけでなく、動物は自分が「死ぬ」ということを知っているのだろうか。死ぬ心配なんてしないで生きているのではないか。命に限りがあることをあらかじめ知っているのは人間だけである。オサムシのオスもメスに食べられる。メスにつかまったオスはいつも抵抗せずに前に逃げようとするだけ。交尾がすんで役割を果たすと、オスはメスのエサになってしまう。メスはお腹の中の卵を育てるためにもういらなくなったオスを食べてしまう。みたいな話。