障害のある子が「親なきあと」にお金で困らない本

専門家によると障害のある人が親亡き後に支援なしで何とかなる場合はごく少数で何らかの支援が必要な場合が多数だと述べている。つまり、「 親亡き後に自立できるようになってほしい 」と思うことに無理がありそうだ。障害のある子の親は将来を考えた時、当然不安が先立ち多くの親ができるだけたくさんのお金を残してあげたいと考える。しかし執筆した渡部さんは必要以上のお金は要らない、と本書で断言されている。なぜか？その前に親が「 生きている 」間に子にしてあげれることがいくつかある。渡部さんは親なきあと子どもがお金に困らない５つのポイントを掲げている。①定期的にお金の入る「 仕組み 」を用意する。具体的には年金、手当、信託 など②そのお金が子どもの生活に使われる仕組みを用意する。成年後見、日常生活自立支援事業 など③生活の場、住む場所を確保する。④入院のリスクに備え医療保険に加入する。⑤困った時に頼れるルートを確保する。特に本書では ⑤ の重要性を強調している。将来を見通してすべての準備を親や家族だけで整えておこうとすると負担感で精神的にも潰れてしまうという。そうならないためにも様々なパイプを持ちその支援者を巻き込むことを勧めている。それは上記のなぜか？に直結する。たとえ親がいなくなろうとも子ども本人ができるだけたくさんの人々と接点を持ってさえいれば、世話は周囲の方が見てくれるという仕組み。無理に『 自立 』を目指すのではなく上手に他者の力を借りるスキルを身に付ける。また蛇足として付け加えるのならばその子にとってのよい効果として自分の苦手分野を把握し他者を頼れば失敗を恐れなくなる、またはサポートを得る、気持ちが切り替わる、落ち込むことも減っていくことのレジリエンス、自己肯定感も含めたより良い人生を送るための心の回復力～立ち直りも期待できると感じる。わが子に人との繋がりを残すことが親からの最後で最大のプレゼントと信じ、本当に困ったときのセーフティーネットなど具体的な事例を参考にしながら「今」できることから準備をして進めてほしいと渡部さんはそう本書で願いを込めている。重要なのはいざという時、備えのないまま丸腰で社会に残さないよう理想はまずは現状を知り常に変化する法制度や福祉サービスに対応しながら有効な情報を手に入れつつ今後準備をしていきたい。個人的には将来、老人と障害者の一体化した施設ができることを切望する。人材不足の観点からも双方のお世話ができる資格への制度変更など日本社会が再考する余地は十分ありそうだ。なお本書の売上の１％は「 親心の記録 」® 作成、配布の支援として寄付される。