リーマン・ショック・コンフィデンシャル(上) (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

（上巻だけの感想です）副題で「追いつめられた金融エリートたち」とは良く付けたもので、正にその通りの迫力満点です。時期的には、2008年3月のベア・スターンズ救済ころから始まります。そこから、「ベアの次はリーマンだ！」（当時私もそうだと思っていました）、市場からは空売りを浴びせられ、マスコミからも叩かれ、リーマンはあっという間に追い詰められます。リーマンのCEOファルドは、バンカメ、シティ、モルスタ、などあらゆるところに声をかけ、リーマン生き残りに奔走します。ファルドはバフェットにも声をかけますが、バフェットより良い条件を提示した投資家から40億ドルの出資を受け、一時凌ぎをします。その後、7月にフレディマック、ファニーメイが政府の管理下に入ることとなり、税金の投入が決定、政府は政治家から一斉に非難を浴びます。ここで実質的には、リーマンの救済で政府支援の可能性が無くなり、その直後にKDBとの交渉が破談してしまい、その後、リーマンは迷走を辿ります。ファルドは身売りを覚悟、買い手候補がバークレイズとバンカメの一騎打ちとなったところ、そして同時に法的整理の準備が水面下で始まるというところで上巻は終わります。リーマン破綻の4日前のことです。大きな流れとしては、悪い順に、ベア・スターンズ、リーマン、メリルリンチ、モルスタ、ゴールドマンで、全てが金融危機にのみ込まれ、全ての投資銀行が消えてしまったなかで、リーマンはその象徴ではありますが、破綻の運命になったのは時代の流れで、ベア、フレディマック、ファニーメイが政府の関与で救われた次の順番だったことが不幸であったと思います。歴史にifはありませんが、バフェットからの提案を受けていたら、もっと違った展開になっていたのかなあと思います。やはり、その時点では「こんな条件の悪い話は受けられない」と思っても、その後に出てくる話はもっと悪いものばかりであるのが世の常で、最初の話を受け入れることが良いケースが多いよなあなんて思ったりもします。サラリーマンの一人として、100年に一度の動きをこれだけ克明に分かるというのは非常に勉強になります。膨大な取材に裏打ちされた内容だとは思いますが、当事者からすれば正しくないところもおそらく多々あると思うので、鵜呑みにするのは危険ですが、読み物として大いに参考になる一冊だと思います。