学びやすいアナログ電子回路

アラフォーにして電子回路を学び始めた者です。最初に初学者が独習するには少し難しめの学部生用テキストに手を出してしまい挫折してしまったのですが、そのあといくつか易しめのテキストを購入して勉強し直しています。本書はそのうちの一冊です。本書のまえがきによれば、「初めて電子回路を学ぶ人を対象に電気回路の基礎知識を合わせて一冊で学ぶ」ことを意図したようで、扱っている内容は基本的なもので説明も浅いですが、アナログ電子回路の入門書として説明はわかりやすいです。特に、本書は、受動線形回路である電気回路の理論と、能動非線形回路を含む電子回路の見方・考え方の違いを最初にわかりやすくまとめているのが印象的です。類書では回路の解析に必要な近似のテクニックがその都度説明されることが多いのに対し、本書は節「1.2電子回路の見方・考え方」や章「半導体回路の基本解析法」にまとめられていて、電子回路と電気回路の本質的な違いが端的に説明されています。この点は、電子回路を類書で学んだ方でも、「目から鱗」的な気づきが得られたり、改めて理解の整理に役立つのではないかと思います。具体的な回路の解析についてそこまで深い内容とはなっていないため、電子回路を設計の本に入る前に、もう少し詳細な解析の本を読む必要があると思います。また本書のトランジスタの解析は、hパラメータによる等価回路を用いて、T型等価回路については触れないので、集積回路設計者を目指される方には入門書とはいえ、浅すぎるかもしれません。ところで、まえがきにある「電気回路も併せて一冊で学ぶ」という意図ですが、確かに、電気回路について必要最低限の説明をしているのですが、電気回路の交流理論は単に知識というよりもいくつも問題を解いて体に身に着ける必要があるものだと思うので、全く電気回路を知らない方がいきなりこの本を読んで電子回路を理解しようとするのは少し無理があるかなと感じました。電気回路について交流理論の基本的なところは理解されている方が、電気回路と電子回路の見方・考え方の違いを理解し、アナログ電子回路の概略を手っ取り早く知るには良書と思います。